北方芸能プロジェクト成果報告/山西省図書館・天津図書館利用案内

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山西省図書館・天津図書館利用案内

戸部 健

1.はじめに

中国のある地域の歴史について研究する場合、それらの地域に関する史料を豊富に所蔵している地方図書館の利用は欠かすことができない。そのため、それら地方図書館の紹介はこれまでも多くの研究者によってなされている。しかし、その後の市場経済化や行政改革により図書館の利用方法は全国的に激しく変動している。そこに中国の図書館情報を更新する意義がある。

以上のような観点から、本稿では中国都市芸能研究会が行った山西省調査の一環として訪問した山西省図書館および著者がその後訪問した天津図書館の具体的な利用方法について報告する。

2.山西省図書館(2002年8月19日調査)*1

  • 所在地:山西省太原市文源巷23号(迎沢公園西)
  • 開館時間:
    • 平日:8:00~11:45 14:30~17:30
    • 土、日:9:00~11:45 14:30~16:45
    • (夏季)
      • 平日:8:00~11:45 14:30~17:30
      • 土、日:9:00~11:45 14:30~17:45
  • 複写:1949年以前の文献のコピー、写真撮影は基本的に不可。抄写のみ可。
山西省図書館北楼

利用に際しては、まず北楼(正門を入って正面の建物)の1階にある受け付けで閲覧証を作らなくてはならない。必要なものはパスポートとデポジットの20元のみで、特に紹介状は必要ない。

山西省の地方文献を閲覧するには東楼(正門を入って右側の建物)の3階にある地方文献閲覧室を訪ねなければならない。ここには山西省の演劇関係の書籍も多く収蔵されている。地方文献閲覧室の書庫は閉架式であるが、閲覧室内には開架の図書もあり、そこには1949年以降に出版された山西地方の書籍、雑誌なども配架されている。しかし、目録を引いてみた限りでは1949年以前の山西省関係の史料は中国国家図書館に比べてさほど充実していない印象を受けた。なお、司書によると、本来同館6階には古籍閲覧室があったが、それらの書籍は全て3階の地方文献閲覧室に移動されたそうである。

山西省図書館東楼

しかし、利用する上で不便な点が多いのも事実である。カード目録にはあるものの閲覧することのできない書籍が少なからずあったのは特に問題である。ただし、訪問当時山西省図書館は組織改変の最中で、それにともない閲覧室、書庫が統廃合されたため、それぞれの書籍の所在が館員にすら把握が困難になっていたこともあり、このような状態は組織改変の暁には改善されることであろう。

この他、古籍や雑誌のマイクロ化、電子化なども進められている。また、山西省図書館ではウェブ・サイトを開設しており、OPACでは1949年以降に出版された書籍の検索ができる*2

3.天津図書館(2003年3月3日調査)

  • 所在地:天津市南開区復康路15号(南開大学の南側、天津市档案館の左隣)
  • 開館時間:
    • 5月1日~9月30日:8:30~19:00
    • 10月1日~4月30日:8:30~18:00(毎週金曜午前は休館)
  • (歴史文献部、地方文献部)8:30~12:00 13:00~17:00(金曜の午前、土、日は休館)
  • 複写:A4が0.4元、B4が0.6元、A3が0.8元で、1枚につき資料費2元が加算される。デジタルカメラを持ち込んでの撮影も可能であるが、資料費は徴収される*3。マイクロ資料はコピー1枚(A4)につき資料費込みで4.6元。
天津図書館主楼

1949年以前の史料は歴史文献部と地方文献部で閲覧することになる。利用に際してはパスポートと中国国内のしかるべき人物の紹介状とが必要となる。それらを入室の際に室員に提示し、利用の手続きをする。

歴史文献部は図書館主楼(正門を入って正面のビル)の裏側に位置し、やや分かりにくい場所にある。まず図書館主楼に入り、突き当たりを右折し、さらに左折し、左手に手荷物預かり所を見ながら進む。すると大きな鏡に突き当たるが、その鏡の裏側に通路がある。通路の出口から外に出て、正面に見える建物の1階が歴史文献部である。歴史文献部の閲覧室はマイクロ資料、善本、日本文庫*4、四庫全書の閲覧室も兼ねている。

地方文献部は図書館主楼の3階にある。室内の本棚には天津の地方文献(主に洋装本)、マイクロ化されていない天津の逐次刊行物、日本文庫の書籍の一部などが配架されている。しかし、これらの本棚には鍵がかかっているため、閲覧に際しては室員に申請する必要がある。そのほか、鍵のかかっていない本棚には1949年以後に出版された天津地方文献も配架されており、これらは自由に閲覧することができる。

歴史文献部・地方文献部それぞれにカード目録があるが、資料目録が数種類刊行されており、それらの利用が便利である。それらの目録は両閲覧室に備え付けられている。天津関連の書籍については天津図書館社科部編『館蔵天津地方文献提要目録(1949.1月以前、中文・図書部分)』(天津図書館、1996年)を利用する。この目録は地方文献部で購入することができる。日本文庫に関しては白春蓮編『天津図書館館蔵旧版日文書目』(天津社会科学院出版社、1996年)、山根幸夫編『天津図書館日本文庫蔵近代中国・日本関係図書分類目録』(汲古書院、2000年)がある。マイクロ化された逐次刊行物に関しては貴志俊彦・劉海岩・張利民編『天津史文献目録』(東京大学東洋文化研究所附属東洋学文献センター、1998年)の301~314頁の目録が便利である。ただ、それらの逐次刊行物を閲覧できる歴史文献部にはマイクロ映写機が一台しかないため、機械の取り合いになることもしばしばである。なお、歴史文献部、地方文献部ともに1949年以前の文献には1冊につき1元の閲覧費がかかる。

この鏡の裏に歴史文献部への通路がある。

天津図書館もウェブ・サイト*5を開設しており、OPACでは1949 年以降に出版された書籍の検索ができる*6。また、現在WEB-CATを利用した日本文庫のOPAC化も進められている*7

同図書館では逐次刊行物のマイクロ化を進めている。しかし、これらの資料がマイクロ化されると複写費が高くなり、また、前述のように映写機も1台しかなく、かえって不便になるという問題もある。天津図書館所蔵の逐次刊行物には北京の中国国家図書館に所蔵されていないものも少なくないだけに、少々頭の痛いところである。

4.天津市古旧図書交易中心(2003年3月2日調査)*8

開催場所:天津市南開区白提路天津市南開人民文化宮

開催日:毎週土・日曜日

近年、中国では古書を購入できる機会が従来に比べ増えている。それは各都市に古書市が開かれるようになったからで、北京の潘家園や上海の文廟などはつとに知られている。天津でも天津市古旧図書交易中心という古書市が開かれている。文献史料の入手に関する情報としてあわせて紹介しておく。

天津市古旧図書交易中心では様々な古書を販売する露店が軒を連ね、民国期の線装本から最近の古新聞、古雑誌までありとあらゆる文献が売りに出される。とりわけ目に付くのは企業の図書室の整理、閉鎖などにともない流出した書籍である。その中には入手が困難な内部出版物が含まれていることもあり、運が良ければ格安で貴重な資料を購入することもできる*9。また、民国期の書籍や契約文書、文革期の档案などもしばしば売りに出されている。これらの資料は古文化街と鼓楼北側とにある古籍書店では入手が困難であり、古書市ならではのものであると言えよう。

天津市古旧図書交易中心
天津市古旧図書交易中心

なお、古旧図書交易中心が開かれる南開人民文化宮の建物は、もともと李純(1875~1920)の家祠として1924年に建てられたものである。李純は直隷系の軍閥で江蘇督軍を務めた人物である*10。華表や戯台などの保存状態も良く、一見の価値がある*11

5.おわりに

以上、山西省図書館、天津図書館および天津古旧図書交易中心について紹介してきたが、以上の情報にも今後の組織改変等により変化するところがあると考えられるのでご注意いただきたい。

近年、中国の地方図書館が続々とウェブ・サイトを開設したことにより、それらの図書館情報へのアクセスが格段に容易になった。しかし、利用手段や資料の保存状況、閲覧の可否などの具体的な情況については公開が十分ではなく、実際に行って見ないと分からないというのが実情である。したがって、研究者が連携して中国の図書館や档案館に関する詳細な情報を交換する枠組みを構築することが、中国の地域史研究だけでなく、広く中国研究全体のために必要であると考える。


*1 山西省図書館及び太原の各図書館、档案館の概略については吉澤誠一郎「張家口・山西城市考察報告」『近代中国研究彙報』22号、2000年、93~112頁に見える。
*2 http://lib.sx.cn/
*3 ただし、2003年3月の時点ではデジタルカメラによる資料撮影に関する規定がなく、撮影料金は担当者や部署によって異なる。
*4 日本文庫は、戦前期に主に日本人が所有していた書籍を集めたものであり、その大半は日本租界にあった天津日本図書館の蔵書である。日本文庫については以下に詳しい。桂川光正「天津図書館『日本文庫』の紹介」『近きに在りて』36号、1999年。桂川光正「『天津図書館日本文庫』再訪記」『近きに在りて』第40号、2001年。
*5 http://www.tjl.tj.cn/
*6 なお、天津図書館の隣にある天津档案館の所蔵に関しては最近「天津档案網」というサイトで档案検索ができるようになった。天津档案網:http://www.tjdag.gov.cn/index.asp
*7 桂川光正前掲論文、68~70頁。
*8 古旧図書交易中心の存在は天津社会科学院歴史研究所の張利民氏にご教示いただいた。記して感謝の意を表したい。
*9 例えば、民盟天津市委員会文史資料研究小組編『文史参考資料彙編』第2輯(1980年代前半の出版)は一冊そのまま「北洋軍閥人物索引」であり、便利である。
*10 徐友春主編『民国人物大辞典』河北人民出版社、245頁。
*11 本調査の後、古旧図書交易中心は南開区の鞍山西路新時代文化市場(天津大学北門付近)に移転した。