北PⅢ

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近現代華北地域における伝統芸能文化の総合的研究

プロジェクト概要(科研費申請書から)

研究の背景

1980年代後半以降、仮面劇などの農村芸能を対象とした文化人類学的な調査・研究が内外の研究者によって積極的に推進され、また史学・社会学分野における地域経済史研究の進展とあいまって、地域文化に根ざした新たな通俗文化史・芸能史像が像を結びつつある。

一方、各地方に保存される伝統文化事象の様態が具体的に解明されるにつれて、それらの個別の事象を相互に結ぶ、ネットワーク構造の解明が新たな課題として浮上している。具体的には、ある地域における大都市・中小都市・農村の間の文化的・人的交流ネットワークの実体解明、さらには社会経済学的背景に留意しつつ、省に相当する地域間のマクロな文化の伝播・影響関係の様態の解明が挙げられる。このためには、農村伝統芸能調査に加えて、都市の大衆に支持された演劇のあり方をも具体的に解明し、両者を比較研究することが必要となろう。

研究の目的

かかる認識から、本研究では清代中期(18世紀)以降に形成され、現代まで行われつづけている中国北方地域(北京・河北・遼寧・陝西・山西など)の伝統芸能、京劇・梆子戯・皮影戯(影絵人形芝居)等をとりあげ、

  1. 伝統演劇劇種の実態と変遷
  2. 京劇・梆子戯・皮影戯の相互影響関係と上演・受容の実態
  3. 地域内および地域間の文化流通ネットワークの具体像と社会経済史的背景

以上の三点について解明することを目的とする。

研究対象とする時期は、西洋近代の衝撃や人口圧力などによる動揺、レコード・映画・電灯・鉄道などの近代的技術・産業の興起、共産党政権下における文化政策など、社会が大きく変化した時期である。従って、研究にあたっては、かかる歴史的背景や西洋近代の受容が、伝統演劇とそれを支える観衆・文化ネットワーク等に与えた影響に十分留意する。

本研究の特色

本研究の特色は、伝統芸能文化の多様性を、従来の美学的な文学・演劇学研究にとどまらず、社会学・宗教学・音楽学などの隣接領域との連携によって、立体的に考究する視点にある。また、従来は資料的制約から研究が困難であった皮影戯を取り上げ、現地調査手法によって研究を進めるが、これは既に70歳を過ぎる高齢に達している民国時期の状況を知るインフォーマントの証言を記録し、映像資料を残すという側面からも、意義深い作業となろう。

また、研究過程で収集された各種資料の電子データ化を進め、研究の効率化をはかるとともに、研究完了後はDVD-ROMおよびインターネットWWWを通じて、広く内外の研究者に提供する計画であり、学術電子情報の発信という面からも重要な意義を持とう。