『都市芸研』第十輯/2011年度新収皮影影巻目録 のバックアップ(No.1)


2011年度新収皮影影巻目録―郭永山氏旧蔵凌源皮影抄本

山下 一夫

1.解説

中国都市芸能研究会では、中国各地の皮影戯の演目資料を保存し、またこれを研究・分析するため、様々な皮影戯台本の収集・整理作業を行っている。

2011年度夏期に行った現地調査では、遼寧省凌源市の著名な皮影芸人、故・郭永山氏旧蔵の影巻(台本)抄本51種を入手した*1。凌源では冀東皮影が行われていて、同系統の影巻は過去に中国都市芸能研究会でも多数収集しており、かなりの部分で重複も存在する*2。しかしこれらの抄本は、いずれも郭永山氏個人の所蔵であったという点で、非常に重要である。

例えば以下の目録を見ると、「刀爾登皮影隊」と記された抄本が多いが、これは氏が一時期所属していた劇団である。氏の経歴はかなりよく解っているため、これらの抄本はそれと付き合わせて検討することが可能である。

また氏は凌源皮影の古い抄本の収集も行っており、例えば以下の目録にある『鎖陽関』や、「永春堂」と記された『血水河』などは、解放以前のものであることが推測される。これらの資料は、旧時の凌源皮影の研究する足がかりともなり得るだろう。

さらに重要なのは、解放後の現代戯の台本である。党の啓蒙活動の一翼を担って上演されたと思われる『衛生快板』や、人民軍や米兵のほか、金日成や李承晩、さらにはマッカーサーまで登場し、朝鮮戦争の経緯を語る『抗美援朝』など、あまり目にしない演目も多い。これらの台本は、1950年代当時の凌源皮影の様相を現代に伝える第一級の資料であるとともに、当時の政策宣伝のあり方などを研究するのにも有用である。

目録のタイトルは、いずれも書皮所載のものによっている。なおこれらの影巻は、将来的に慶應義塾大学メディアセンターに寄贈・公開する予定である。

2.目録

簡段1冊
全家福1冊
快板1冊同意影院
衛生快板1冊同意影院
上民校1冊郭秀峰抄本
抗美援朝1冊郭永山抄本
雙挂印1冊郭永山抄本
三丑会1冊郭永山抄本
算糧登殿1冊郭永山抄本
新嫁妝1冊郭永山抄本
三堂会審1冊郭永山抄本
九件衣2冊郭永山抄本
鎮冤塔8冊郭永山抄本
破洪州7冊郭永山抄本
雙名傳8冊郭永山抄本
降魔陣12冊刀爾登皮影隊、郭永山抄本
長壽山10冊刀爾登皮影隊、張鈞抄本
天汗山6冊刀爾登皮影隊
英雄會6冊刀爾登皮影隊
五虎傳12冊刀爾登皮影隊
鎖陽關4冊刀爾登皮影隊
蘇景龍征南7冊郭金龍抄本
靈飛鏡7冊楊建恩抄本
青雲劍16冊楊建恩抄本
五鋒會17冊楊建恩抄本
楊家歸西9冊石國良抄本
分龍會7冊王喜抄本
鐵邱墳12冊黃石哨大隊、三十家子大隊
百花亭6冊賀廷抄本
血水河4冊永春堂
分龍會、江東橋14冊
五鋒會11冊
飛虎夢12冊
紫金鐘9冊
泥馬渡江12冊
龍鳳圖22冊
昭君出塞8冊
雙鳳奇緣8冊
金頂山13冊
珍珠塔10冊
平西冊4冊
鎖陽關16冊
薄命圖4冊
雙鎖山8冊
飛龍傳8冊
金頂山4冊
齊國4冊
薛剛追印4冊
木陽關6冊
全家福12冊
全家福8冊

*1 郭永山氏については、拙稿「東北皮影戯研究のために―凌源および哈爾浜」(『中国都市芸能研究』第九輯、中国都市芸能研究会、2010年、pp5―18)、p11を参照。
*2 中国都市芸能研究会で過去に収集した冀東皮影の影巻については、「収集影巻一覧」(『近代中国都市芸能に関する基礎的研究』、平成9―11年度科学研究費基盤研究(C)研究成果報告書、2001年、pp149―151)、および「中国都市芸能研究会収集皮影影巻解題目録稿」(一)(『中国都市芸能研究』第一輯、中国都市芸能研究会、2002年、pp77―94)、同(二)(『中国都市芸能研究』第二輯、中国都市芸能研究会、2003年、pp89―105)、「2002年度新収皮影影巻目録」(『中国都市芸能研究』第二輯、中国都市芸能研究会、2003年、pp76―77)を参照。