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明史紀事本末』に言う。

汪直は久しく権勢をほしいままにしており、勢力は国内外を左右するほど、天下の人々は震え上がった。阿丑という諧謔に長じた宦官がおり、しばしば御前で院本を演じたが、頗る諷喩の趣があった。ある日、阿丑が泥酔した者を演じた。先払いが偽って「お役人さまのおなり。」と言った。彼は相変わらずくだを巻いていた。さらに、「陛下のおなり。」と言っても、相変わらずくだを巻いていた。「汪太監さまのおなり。」と言うと、酔っぱらいは吃驚しておとなしくなった。傍らの者が「陛下のおなりでも控えなかったのに、汪太監さまを恐れるとはどういうことですか。」というと、阿丑は「私は汪太監さまは知っていますが、天子は知りません。」と言った。又ある日、突然汪直の格好をして、二丁の斧を持ち、朝見する時のように小走りに歩いた。ある者が訳を聞くと、答えて「わしが兵を率いるのは、この二つの鉞だけがたよりじゃ。」と言った。「何という鉞ですか。」と聞くと、「王越、陳鉞である。」と答えた。(これをご覧になって)陛下は微笑まれた。

(辻)

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Last-modified: 2016-08-19 (金) 16:30:34 (1157d)