雑文/中国の試験不正問題

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2004-05-27/b

中国の試験不正問題

北京晩報(2004/05/27)に、中国の各種全国試験における不正問題の記事が載ってました。 教育部の通知の転載で、ニュースソースはこちら

数年前、高考の試験会場で受験生が歩き回ってカンニングしまくってるのを試験官が見ぬふりしてる 隠し撮り映像が流されて大問題になりましたが、問題は解決されないどころか、更に広まっているみたいですねえ。記事に書かれている事例では、教育業績を上げるためと金儲け、特に後者の目的が強いようです。拝金の風潮と、教員給与がさほど高くないお国柄の影響ですかね。

学生の受験する各種資格試験なども、大学によって差はあるのでしょうけれど、不正がなされている可能性が日本などよりも遥かに高いことになります。TOEFLとかは大丈夫なんですかね?

それにしても、近頃、北大近辺を歩いていて声をかけてくるのは、謎版屋よりも謎領収書・謎身分証明書・謎卒業証明書屋の方が多いくらいなのですが、中国の資格や証明書がココまで信頼性が無いとなると、流石に今後さまざまな不利益が表面化する危険性がありますね。実際、私が中国人を採用したり審査したりする立場であったら、自分で試験を課してやらないと信用できません。

まあ、ここでも、目先の儲けばかりを追求して、長期的な利益を考えない、中国人の悪い面が出てしまっているのでしょう。

そいえば、日本への留学希望者向けの統一試験とかあったと思うけど、アレの運用は大丈夫なんだろうねえ?うーん、人ごとではないニュースだなあ。

2004/05/27

2004-06-21

英語四級考試問題漏洩事件

6/20に実施された大学共通英語実力試験、替え玉受験防止のため、 身分証明書・学生証・受験証の携行を義務づけるなど、それなりに対策が とられていたようですが、しかし、やはり問題の漏洩が発生していました。

北京青年報によると、試験終了後、ある受験生が、前日、某BBSに、この英語の問題の模範答案つくってよ、と書き込まれていたのと同じ問題が実際に出題された、と訴え出たとのこと。また、武漢では、実力試験ではあり得ないカンペ持ち込みが発覚、問題と対応する解答が書かれており、しかも同様のカンペ持ち込み者が7名発見されとのこと。事件は目下調査中ですが、問題のカキコのIPの南寧、今年の出題担当だった上海などにいろいろと飛び火している模様です。

それにしても、湖南での高校受験問題漏洩のニュースなどを見るにつけ、教育腐敗の根深さを感じます。

問題の第一は、目前の利益のみを追求する学生・教育関係者の存在です。中国の某PC雑誌に、現在の中国の市場経済化は、アダム・スミスの『国富論』ばかりを喧伝し『道徳情操論』に言及しない経済学者にミスリードされた結果、個人の利益追求が過度に重視され、犯罪すらもいとわない悪しき風潮をもたらした、というしごくまっとうな評論が載っていましたが、試験不正問題はその教育現場におけるあらわれと言えます。試験問題を事前に盗み見て、学生を集めて有料の特別講義を開催すれば、それはお金はもうかるし学生の試験成績=教育実績も上がるので、一石二鳥だと思うのでしょう。しかし、そのために大学どころか中国の教育システム全般の信頼が損なわれることは、中長期的に中国の学生や教育機関に甚大な損失をもたらすでしょう。また、そのような教育を受けて育った若者は、招来どのような人物になるのでしょうか?

こういった「学術腐敗」の背景には、教員給与の安さ、大学における過度の業績主義の導入といった中国の教育界がかかえる懸案があるのも確かです

一方、中国の試験や試験制度、そのものにも問題があるものと思われます。漏洩した英作文の問題は、

A brief introduction to tourist attract

自由作文問題です。高考の問題もそうですが、全般に中国の試験問題は概してこの種の自由作文が多く出題され、日本の各種試験とはかなり様子がことなるような印象をうけます。その意味では、出題側にも工夫の余地が多いと言えるでしょう。

また、試験主催者と試験会場についても、再考の余地があるでしょう。高考(大学入試)の会場は、それぞれの受験生の所属する高校、英語四級考試も大学で実施されます。通常の人間関係の延長で重要な試験が実施されることになるわけです。このため、不正が発生する余地が高くなります。 試験の入退出や物品持ち込みなどの規則も、日本の大学入試などにくらべて遥かに甘いようです。

これらの問題を、政府あるいは教育界がいかに解決していくのか、今後の具体策に注目していきたいと思います。

2004/06/21

2004-07-13

『瞭望東方周刊』レポート

《瞭望东方周刊》2004年第27期に〈四、六级考试作弊利益链调查〉および〈严肃的考试制度何以堕落〉というショッキングなレポートが載っている。

まず前者は、吉林で実際に大学英語四・六級試験の替え玉受験の「枪手(ガンマン)」と接触・調査したレポート。

ある優秀な院生は、これまでに三度の大学院入試、二度の司法試験のガンマンをつとめて、全て合格、院は二万元、司法試験は四万元、英語四級は額が小さいので、院入試のおまけにつけている。

別のガンマンは、英語四級は1500元、六級は2500元、これまで八回やって全て合格。四平市の裁判所長の代理で六級を受けたこともある。

吉林大などの重点大学の学生・院生がガンマンの供給地で、シーズンになると、英語学科の学生・院生たちは大半が予約を受けて、午前四級・午後六級をこなす。

替え玉受験の仲介を行う企業も出てきている。新聞の家庭教師広告で「最短期間で絶対合格!」などとあるのがそれである。

不正受験の方法は二種類。一つは、替え玉受験。偽の身分証明書を利用する。江南の偽証明書の方が質が高いのでオススメ。はじめから入れ替わって受験する場合と、試験開始後に入れ替わり、終了前にもとに戻るやり方がある。もう一つは問題の不正入手。試験開始後、試験場外から携帯で解答を送信する。

程度の高くない非重点大学では、学生募集・集金に難儀している。このため、社会人の英語四・六級試験受験料収入がほしい。また、大学のランク付けが英語試験合格率で行われるため、合格率向上のために試験監督が甘くなる。吉林では吉林電大が一番甘い。

後者は、試験制度の問題を論じたものである。英語四・六級試験が大学卒業および就職の条件とされていることから、英語に興味のない学生まで受験しなくてはならず、負担が大きいことを指摘している。また、ガンマンの業務範囲は、英語試験のみならず、社会人大学受験・大学院受験・コンピュータ試験・TOEFLIELTSにまで及んでいるそうだ。

これぞ、学術腐敗・倫理無き市場経済化の極致と言うべきであろう。試験負担が重いのは確かにその通りであろう。しかし、問題は、試験監督者(=教員)・受験生(およびその家族)のモラルの低さ、それと、試験実施方法の甘さであろう。日本の入試や資格試験では、途中退出が認められることはまずあり得ない。しかし、中国では、途中退出に関する制限が設けられたのは今年からである。また、携帯通信機器のスイッチは全て切らせ、机の下には荷物を置かせないものであるが、中国ではそのような制限は無いようである。また、学生は自分の大学で試験をうけるようだが、これも、試験会場をランダムに割り当てる、などの対策が必要であろう(それでも、試験監督(=教員)間の談合事件は起こりそうだが)。

しかし不思議なのは、大学にせよ企業にせよ、証明書に頼らず、自ら必要な人材を選び取るという姿勢が日本ほど明確でない点である。日本では、入試問題はその大学がいかなる学生を集めたいかというメッセージであると理解されている(少なくとも、私のところでは)。ところが中国では、不正の横行する統一試験の成績のみで学生を選び取る。企業も、英語力が本当に必要とされているのであれば、キチンと試験を課すはずである(逆に、大半の企業では、国家・大学が要求するほどの英語力は必要とされていない、ということなのかもしれないが)。

このような現状がある以上、我々が中国からの人材を受け入れる際には、勢い慎重にならざるを得まい。ネットで認証できる重点大学の卒業証書以外は信用せず、日本側担当者の立ち会いのもとに行われた試験以外は成績判断に用いない、くらいのことは必要であろう。

海外がこぞってこのような対策を取りだしたとき、一番損をするのは中国と中国の学術・教育界自身なのである。国民性とはいえ、短絡的に目の前の利益のみを追いかけるのは、いい加減にしてもらいたいものだ。