『説岳全伝』/03 のバックアップ差分(No.1)


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*第三回 [#g52df46f]
**岳院君 門を閉ざして子に課し&br;周先生 帳を設けて徒に授く [#n24fbb34]

詩に曰く

>洪水に漂流し患難に遭い&br;嘆くに堪えたり 幼子 蓬蒿((雑草。))に&ruby(くる){困};しむは&br;終宵 紡績して家食を供す&br;子を教え夫を思い &ruby(ひそか){暗};に涙を&ruby(おと){拋}す

さて、岳飛は家を出ると、母の言いつけ通り芝刈りに行ったが、どこに芝があるのか知らなかった。考えながら、とあるはげ山にやってきた。足を踏みしめ、四方を望んだが、少しの芝も見あたらない。一歩一歩頂上まで登ってみたが、あたりには全く人の気配がない。次の山に登って裏を望むと、七・八人の子どもたちが群がって野原で遊んでいた。そのうち二人は、王員外の左隣の家の子で、一人は張小乙、一人は李小二といった。岳飛とみて、声をかけた。

「岳君、何しに来たのかい。」

岳飛

「母に言われて、芝刈りに来たのです。」

子どもたちは声をそろえて

「いいところに来たね。芝刈りなんてやめて、一緒に羅漢積み遊び((原文「堆羅漢耍子」。この訳、自信がない。ご指正を乞う。))をしよう。」

岳飛は言った。

「母に言われて芝刈りをするのですから、あなた達と一緒に遊ぶひまは有りません。」

子どもたちは言った。

「何かと言えば母に言われてだ。もしおれたちと一緒に遊ばないのなら、きさまをぶつぞ。」

岳飛

「みなさん冗談はやめて下さい。この岳飛、恐がりはしませんよ。」

張乙

「だれが冗談を言ったって。」

李二が口を継いで

「お前が恐くないからって、まさか俺たちがお前を恐がるというのか。」

王三

「問答無用だ。」

と言うや殴りかかった。趙四は続いて蹴りかかり、七・八人の子どもたちは一斉に袋叩きにしようとした。しかし、岳飛は両手で引っ張り三・四人を倒すと、その隙に抜け出して逃げた。子どもたちは

「逃げるのか、逃げるのか。」

と口では言ったものの、岳飛が手強いのを見て、追いかけようとはしなかった。逆に何人かは岳飛の家にやってきて泣きながら岳夫人に、岳飛がぶったと言いつけた。岳夫人は、なだめすかして帰らせた。

岳飛は子どもたちから逃れると、山の向こうに行き、枯れ枝を折って篭一杯集め、日も暮れてから篭を手にゆっくりと家に帰ってきた。戸をくぐり、篭を置くと、内に食事をしに行った。岳夫人は篭の中が全て枯れ枝であるのを見て、岳飛に言った。

「私はお前に芝草をかき集めてきなさいと言ったでしょう。それなのに、子どもたちと喧嘩して、人が押し掛けてくるようなことを引き起こしてしまうし、ましてこの枯れ枝は人様の樹木ですから、もし山主に見つかったら、彼らにお仕置きされてしまうじゃないですか。それに、木に登って落ちたりして、間違いでもあったら、母は誰に頼ったらいいのですか。」

岳飛は慌てて跪くと

「お母さん、心配なさらないで下さい。私は明日からは枯れ枝は取りません。」

岳夫人

「立ちなさい。もう芝刈りには行かないでいいです。私は前に員外のところで、この何冊かの本を頂いてきました。明日、私が勉強を教えてあげましょう。」

岳飛

「お母さんの言う通りにします。」

その夜は話もない。

翌日、岳夫人は本を開いて、岳飛に読書を教えた。岳飛は生まれついての聡明のおかげで、一度教えればすぐに読め、一度読めばすぐに熟達した。何日かして、岳夫人は言った。

「お前、母は幾らかの小遣いをためてあるから、お前持っていって紙と筆を買っていらっしゃい。書き方を勉強するのも大事なことです。」

岳飛はすこし考えて

「お母さん、紙や筆は、買いに行くことはないですよ。ちゃんとありますから。」

夫人

「どこにあるのかい。」

岳飛

「ちょっと取ってきます。」

もっこを持って家を出ると、川岸に行って、もっこいっぱいの川砂をすくい、また何本かの柳の枝を折って、筆のようにした。家に戻ると夫人に

「お母さん、この紙と筆は、お金を払って買う必要もないし、使いきることもありませんよ。」

夫人は微笑んで

「これでもいいでしょう。」

そこで、砂を机の上に敷き詰めて、夫人は柳の枝を手にして、岳飛に字を教えた。しばらくやっているうちに、岳飛は自分でも書けるようになった。岳飛がこれより家にいて、朝夕書物を読み、字を練習したことは、これまでとする。

さて、王員外の息子の王貴は、歳は六歳に過ぎなかったが、生まれつき健康で力が強く、荒っぽい性格だった。ある日、使用人の王安と、裏の花園で遊んでいて、百花亭に入って腰掛けると、卓の上に一そろいの将棋が置いてあった。王貴は尋ねた。

「これはなに。何でたくさんの字が書いてあるの。何に使うの。」

王安

「これは&ruby(シャンチー){象棋};((いわゆる中国将棋。コマの移動範囲が決まっており、将は自陣より出られない。))というものです。二人向き合ってさして、勝負を競うものです。」

王貴

「どうしたら勝つの。」

王安

「赤が黒の将軍を取れば、黒の負けです。黒が赤の将軍を取れば、黒の勝ちです。」

王貴

「それは簡単だ。ちゃんとならべたら、一緒にやろう。」

王安は駒をならべると、赤を王貴の前にやって言った。

「若様、お先にどうぞ。」

王貴

「僕が先にやったら、お前の負けだよ。」

王安

「何で私が負けるのですか。」

王貴は自分の将軍で王安の将軍を取り

「お前の負けだ。」

王安は笑って

「こんなさし方はありませんよ。将軍が出ていけるなんて。やはり、私が教えて差し上げましょう。」

王貴

「ふざけるな。将軍なら、僕の思い通りになるはずなのに、どうして出て言っちゃいけないんだ。おまえ、僕が将棋をさせないと思って、騙すつもりだろう。」

将棋盤を持って、王安の頭に打ちかかった。王安は全く予期していなかったので、王貴に将棋盤で一発やられて、頭から血を流した。王安は

「あっ。」

と叫んで、両手で頭を抱えて、身を翻して逃げ出した。王貴は後を追いかけた。王安が奥の棟まで走っていくと、員外は王安が頭中血まみれなのを見て、そのわけを尋ねた。王安は象棋をさしたことを、一通り話した。まだ話し終わらないところに、ちょうど王貴が追いついてきた。員外は激怒して、罵った。

「畜生、子どものくせに、このような無礼をはたらくのか。」

そして、王貴の頭に、続けざまにいくつもげんこつを落とした。

王貴は父親にぶたれ罵られて、飛ぶように走って部屋に入り、母親に泣きながら言った。

「お父さんが僕をぶち殺そうとしています。」

夫人は急いで、下女にお菓子を持ってこさせて食べさせると

「泣くんじゃありません。私がついてますから。」

話しも終わらないうちに、員外が怒りながらやってくるのが見えたので、夫人は部屋の戸を閉めた。員外

「あん畜生はいるか。」

夫人は答えもせず、こっぴどく員外の頬を張ると、泣き出して、言った。

「このおいぼれが。今日は子どもがいない、明日は子どもがほしいと言ったあげくに、岳夫人に何度も妾を取れと勧められて、ようやく生まれた一人息子ですよ。いったい、どんな大事で、殴り殺そうと言うのですか。この柔らかな骨が、打たれて平気なわけがないでしょう。いいでしょう、いいでしょう。おいぼれのあなたと命を捨てた方がましです。」

と、員外に頭をぶつけようとした。幸いにも下女たちが慌てて近づくと、引っ張るのは引っ張り、なだめるのはなだめ、夫人を部屋の中に引き戻した。員外は怒りのあまり口もきけず、やっとのことで一言、

「よし、よし、よし。お前がそんなにあいつを甘やかすのなら、好きにしろ、ただ将来ろくな事になりはしないぞ。」

身を返して母屋に戻ると、悶々として怒りのやり場もなかった。

すると、門番がやってきて

「張員外がおみえです。」

員外は通させた。程なく迎え入れると、挨拶して席に着いた。王明

「賢弟、なんで怒気を帯びておられるのか。」

張員外

「兄上、言わないで下さい。私、いささか癪を患いまして、歩くのが大変なので、馬を一匹買い求め、家で飼って足代わりにしていたのです。それがなんと、あの張顕のやつが、毎日乗り回して、ぶつかっては人様のものを壊し、それがしが弁償させられたこと、一度ではありません。なんと、今日もまた出かけて、人を踏んで怪我させたのですが、相手はうちの門口まで担いで来させて大騒ぎしたのです。私が何度も謝って、治療費に何両かの金を渡して、ようやく立ち去りました。あん畜生がこのような滅茶苦茶なことをしたのですから、もちろん奴を叱りつけましたよ。しかし、あの馬鹿女房がかばいだてして、逆に私と大騒ぎになって、顔をひっかかれてしまいました。どうにも腹の虫がおさまらないので、兄上と話しにきたのです。」

王明が口を開かないうちに、また一人、せき込み叫びながら入ってきた。

「兄上、どうしてくれよう、どうしてくれよう。」

二人が見ると、それは王明・張達の親友、湯文仲だった。二人はあわてて立ち上がって迎えると、尋ねた。

「弟ご、これはいったいどうしたことですか。」

文仲は腰をおろしたが、怒りに声も出ず、しばらく休んで言った。

「兄上、お話しします。金じいさん夫婦が、わが屋敷の門前の家を借りて汁粉屋をやっているのですが、なんとあの湯懐のやつ、毎日汁粉を食べに行き、仕込んだのをみんな食べてしまうと、足りないと騒ぐのです。そこで次の日に多めに仕込んでおくと、奴は食べに行かず、少な目に仕込むと、また騒ぎに行く。金じいさんはどうしようもなく、それがしに言いに来たので、幾らかのお金を償って、湯懐をすこし叱ったのです。ところがあの畜生は、昨夜石を運んで、金じいさんの門口に積み上げたので、今朝、金じいさんが起きて戸を開けるや、石が倒れ込んできて、足を怪我したのです。幸い命は無事だったのですが、金夫婦はわあわあ泣きながら私に言いに来て、仕方なく養生するようにまた金を渡しました。それがしは勿論あの畜生を何度か打ったのですが、あの馬鹿女房が、逆に死ぬの死なぬのとわめきだして、私は杖で打たれてしまいました。どうにも腹の虫がおさまらないので、兄上と話しに来たのです。」

王明

「賢弟、まあ怒りをおさえて。我々二人も同病ですよ。」

そして王貴・張顕のことを、一通り話した。各々腹立たしく思ったが、どうしようもなかった。

どうしようもないところに、門番がやってきて言った。

「陝西の周侗様がおみえになって、お会いしたいとのことです。」

三人の員外はそれを聞くや大喜び、急いでそろって門の外まで出迎えた。客間に請じ入れ、挨拶をすませて席に着くと、王明が切り出した。

「兄上、お久しぶりでございます。近頃兄上は東京においでと聞いておりましたが、今日はどのような風の吹き回しでしょうか。」

周侗

「それがしも老いぼれましたので、以前こちらは大名府城内の盧家にいたころ手に入れておいた何町歩かの田畑を清算に行く途中、ついでに弟ごたちに会いに参ったのです。すぐ帰りますよ。」

王明

「兄上がおいでになるとはせっかくの機会、何日か逗留して頂くのが当然です。すぐ帰るなんて法はありませんよ。」

急いで台所に酒の用意をさせてもてなし、一方で王安に小作たちを荷物運びにやらせた。

三人の員外は集まって雑談した。王明はまた尋ねた。

「兄上とはお別れしてから二十余年になりますが、奥様、ご子息はどちらにいらっしゃるのでしょうか。」

周侗

「細君は死んでずいぶんになります。せがれは、弟子の盧俊義に従って遼国征伐に行き、陣没しました。かの弟子の林冲と盧俊義の二人も、ともに奸臣に殺されてしまいました。今や、全く天涯孤独です。賢弟たちには、何人のご子息がおありですか。」

三人の員外

「隠さず話せば、我々三人、ちょうどその畜生どものために、愚痴を言い合っていたところです。」

三人はそれぞれ息子のことを話した。周侗

「そのような年齢でしたら、なぜ先生を頼んで、しつけてもらわないのですか。」

三人の員外

「何人かの先生を頼んだのですが、皆彼らに追い払われてしまったのです。このような強情な子に、だれが教えてくれましょうや。」

周侗は微笑んで

「それはその何人かの先生のしつけがうまくなかったので、こうなってしまったのです。それがし大口をたたくわけではありませんが、もしここで彼らを教えたとして、果たして彼らに追い払えますかな。」

三人の員外は大喜び

「それならば、兄上はこちらに留まって下さるのですか。」

周侗

「お三方とは兄弟のよしみ、それがしご子息たちを立派に育て上げてみせましょう。」

三人の員外はとても喜び、各々感謝を述べた。その日、酒宴が終わり、張・湯の二人がそれぞれ帰ったことは、それまでとする。

この日、王貴は外で遊んでいたが、一人の小作が言うに

「員外が厳しい先生をお招きしましたから、あなた方も遊んでいられなくなりますよ。」

王貴はそれを聞いて、あわてて張顕・湯懐を探すと、相談して、鉄尺や短い棍棒を用意して、先生を打って威勢をくじいてやることにした。

翌日、員外たちが息子を学校に連れて来ると、みな先生に挨拶して、周侗に入学祝いの酒を勧めた。周侗

「賢弟たち、ひとまずお帰り下さい。いまは酒を飲む時ではありません。」

そして三人の員外を家塾から送り出すと、戻ってきて、言いつけた。

「王貴、本を読みなさい。」

王貴

「客が本を読まないうちに、主人に読ませてよいものか。こんなでたらめで、よく先生をやっていられるな。」

手を伸ばして靴下の中を探り、一本の鉄尺を取り出して、先生の頭めがけて打ちかかった。周侗は目が早く手もすばやいので、頭を横にそらし、片手で鉄尺を受けとめ、もう片手で王貴をたばさみぶらさげて、長椅子の上に倒すと、戒め棒を取って、王貴をひどく打ちすえた。考えてみれば、金持ちの子弟で痛い思いなどしたことがなかったのが、こうやって何発か打たれたのだ、王貴は打たれておとなしく服従し、周侗の教えを守るしか無くなった。張顕・湯懐もそれを見て、ひそかに短い得物を放り出し、わがまま勝手しようとしなくなった。これより、みな先生の言いつけに従い、学問に精を出した。

さて岳飛は壁を隔てた反対側で、毎日踏み台に乗って塀の上に登り、周侗先生の講義を聴いていた。ある日、おつきの童が言うには

「西郷の王老実とかいう人が、会いに来ていますが。」

周侗

「ちょうど彼に会いたかったのだ。早くお通ししなさい。」

童は声に応じて

「承知しました。」

すぐに王老実を家塾に連れてきた。王老実は周侗に挨拶して

「それがし、ずうっと旦那様の田畑を耕して参りましたが、旦那様は十年以上もいらっしゃらなかったので、それがし毎年の年貢米を売ったお金を、家にとってあります。今、旦那様がこちらにおいでとうかがいましたので、お訪ねしました。どうか精算においで下さい。」

周侗

「ご老人のかくなる誠実な心、まことに得難いものです。」

そして王貴に

「お前、うちに行って王安に『先生の小作がやってきていますので、何か簡単な食事を、出してあげて下さい』と言っておくれ。」

王貴は身を返して入っていった。周侗はまた尋ねた。

「目下のところ稲の作柄はどうですか。」

王老実

「それがしの田では、一年に二年分の収穫があります。今年は、一株に二つの穂が生えました。旦那様に目出たいことがあったのではありませんか。」

周侗

「二つの穂が生えるのは、貴人が出るきざしだ。これは珍しい、明日一緒に見に行くとしよう。」

話しているところに、童が小作に外で食事するよう呼びにきた。その日は、王老実を休ませ、翌日、周侗は三人の学生に言った。

「私は三つの問題を出しておくから、おまえたち一生懸命解答をつくっておきなさい。帰ってきたら添削します。」

話しながら、服を着替えると、王老実と村に出かけた。

さて岳飛は周侗が出かけるのを見て、考えるに、

「先生が出かけたのだから、家塾に行ってみるとしよう。」

そして家塾にやってきた。王貴は岳飛を見つけて、腕をつかんで

「湯兄さん、張君、二人とも見にきて。こいつは岳飛といって、父さんはいつもとても頭が良いとほめているんだ。今日、先生は私たちに問題を出したけれども、とてもやる気にはなれないから、彼に代わりにやってもらったらどうだろう。」

湯・張の二人は声をそろえて

「それはいい。僕らはちょうどお母さんに会いに行こうとしていたところ、岳兄さん、代わりにやっておいて下さい。」

岳飛

「失敗してしまい、先生の気に沿わないのが心配です。」

三人

「そんな遠慮しないで。何がなんでもお願いするよ。」

王貴は岳飛が逃げるのを心配して、家塾の戸に鍵をかけ、岳飛に言った。

「お腹が空いたら、引き出しの中にお菓子があるから、好きなだけ食べな。」

言うと、三人は遊びに走っていった。

岳飛は三人の古い解答をひっくり返して見て、それぞれの書きぶりにあわせて、三つの答案を作った。先生の席に座り、周侗の文章を細かに見るや、覚えず机をたたいて言った。

「私、岳飛がこの人の教えを受けることが出来たなら、後日名を立てられない心配は無いのだが。」

立ち上がって筆を持ち、墨をふくませ踏み台を置き、上に立つと、塗り壁に何句か書き付けた。

>筆を投ずるは 虎頭を&ruby(うらや){羨};むに由来す&br;須く談笑して 封侯を&ruby(もと){覓}めしむべし&br;胸中の浩氣 霄漢を凌ぎ&br;腰下の青萍((いにしえの宝剣の名。)) 斗牛((天の斗宿と牛宿の間。))を射る&br;英雄 自ら&ruby(まさ){合};に羹鼎(あつもののかなえ)を&ruby(ととの){調};うべし&br;雲龍 鳳虎 自と相い投ぜん&br;功名 未だ男兒の志を遂げざるに&br;一に時人の&ruby(やぶれ){敝};し&ruby(かわごろも){裘};を笑うに任す

書き終えると一度音読し、またその八句の後に八字

>七歳の幼童 岳飛 &ruby(たまたま){偶};題す

と書いた。ようやく筆を置いたところに、突然家塾の戸の鍵音が聞こえた。振り返れば、王貴が張顕・湯懐と戸を開けて入ってきて、慌てふためいて言った。

「大変だ。逃げろ、逃げろ。」

岳飛はびっくり仰天した。

いったい何事なのかは、次回のお楽しみ。