中国伝統劇解説/京劇『失子驚瘋』

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明の嘉靖年間、江蘇武信の梅俊の妻﹒鄭氏には子がなく、徐﹒胡二人の妾がいた。胡氏は妊娠するが、十四月たっても出産しなかった。ある日、梅俊は庭園で福寿鏡を掘り当て、出産の兆しとするが、嫉んだ徐氏は妖怪の子であると吹き込み、胡氏を殺させようとする。侍女﹒寿春は事情を知って、鄭氏﹒胡氏に知らせ、鄭氏はその兄の順天府尹の役所に、胡氏に寿春をつけて頼って行かせ、生まれてくる子のために福寿鏡を持たせた。梅俊は胡氏の逃亡を知り、追跡させるが、観音菩薩の霊験に救われ、あばら屋に男児を出産する。

胡氏は乳が足りず、寿春に村まで落雁を買いに行かせる。そこにあらわれた山賊の金眼豹は、胡氏の美貌を見て子どもを打ち捨て、胡氏をさらって山に登る。卸職総兵の林鶴はこの子を拾い、連れ帰って養い育てる。胡氏は山賊の妻に追われて山を下りるが、寿春と会って、子を失ったことを知り、発狂する。ある日、林鶴の雇った乳母が連れている子を見て、それを奪おうとした。林鶴は寿春に尋ねて、胡氏が精神病であると知るや、直ちに銀五十両を寿春に贈り、胡氏を療養させるように言う。そして成人の暁に、母子再会させようとする。

  • 《乾坤福寿鏡》の一幕。尚小雲は、若い頃は侍女寿春、後に胡氏を演ずるようになった。歌唱﹒しぐさ共に新たな創造が加えられた。