はじめに †
中国で高いシェアを誇る中国金山公司のワープロソフトWPS、その新バージョンWPS 2001 (現在はWPS Officeに改称)のβ版が、去る3月12日よりネット上で公開されている。以下 は、それをテストしたレポートである。
本レポートの内容は、まだ試用期間が長くないため、錯誤があると思われるので、ご注意 いただきたい。また、本レポートにはOS・アプリケーションソフトの想定外用途でのテス ト結果も含まれる。そのため、本レポートの内容の追試の結果生じるいかなる損害に対して も、メーカー並びに筆者は一切の責任を追いかねるので、自己責任において試みていただきたい。
ちなみに、テスト環境は、
PII400+256MB Windows2000日本語版
である。
1.入手先 †
WPS Officeの試用版は、金山公司のWPS β版ダウンロードページから入手できる。配 布開始は2001/03/12、配布期間は明記されていない。
配布されているのは
WPS Office測試版 WPS Office測試版(帯GB18030字庫)
である。このテストレポートでは、勿論、GB18030フォント付きバージョンを用いた。た だし、ファイルサイズは34MB(フォント無し版は、約19MB)と巨大であり、中国国内のサ イトからダウンロードすることになるので、常時接続環境からのダウンロードをお勧めする。
あらかじめデフォルト言語を簡体字中国語に切り替え再起動した日本語版Windows2000 で、ダウンロードしたzipファイルを解凍し、セットアッププログラムを実行すると、問題 なくWPS Officeを使用することができた。
2.WPS Office †
WPS Officeは、従来からのワープロに加えて、表計算およびプレゼンテーション機能を追加 している。下図、左のアイコン上がワープロ、その下がスプレッドシート、その下がプレゼ ンテーションである。
奥の深いソフトであるので、さまざまなテスト項目が考えられるが、ここではワープロの多 言語機能についてのみ概観する。
2.1 多言語入力 †
WPSに注目する理由は、GB18030への対応にある。しかし、デフォルトの状態ではGB18030 は使用できない。[工具][総合設置][GB18030]で「支持GB18030」をチェックして、WPSを 再起動する必要がある。
これでGB18030が使用可能になるのだが、しかし、問題がある。WPSはGB18030対応漢字の入 力方法を何ら提供していないのだ。したがって、GB18030対応漢字の入力には文字コード表な どを準備する必要がある。
文字コード表の対応については後述するが、しかし、筆者の環境ではWPSへのGB18030漢字の 入力がうまくいかない。IME パッドからの入力を試みたが、「?」化けして貼り付けられてし まうのだ。Wordに入力したエクステンションA漢字のC&P、あるいはエクステンションA漢字 のWord文書の読み込みも試みたが、いずれも「?」化けに終わった。この文字化け方から察す るに、クリップボードにはUnicodeテキストとしてコピーされているものの、WPSはGB18030 テキストとしてペーストしてしまうことが原因であると思われる。Windows2000では、微軟拼音のIMEパッドがインストールされず、日本語IME 2000のそれが呼び出されてしまうのが問題であり、中国語版のWindows2000ではうまくいくのかも知れない。これについては、今後、Windows2000 Multi Language版などを用いて、検証をかさねていきたい。
さて、漢字以外の文字では、「m」「n」に声調符号が付いた文字にWPSは対応している。これは、[挿入][特殊文字/符号][漢語拼音]から入力できる。ただし、これはWPSに付属する独自コードのピンインフォントを使用しており、汎用性は乏しい。
さて、WPSへの入力であるが、微軟新注音、ATOK13、IME2000、いずれも問題なかった。
ただし、フォントの切り替えを実験したところ、GBとBig5のフォントには切り替わるが、JISのフォントには切り替えられなかった。ここからも、Unicode内部処理に対応していないことが窺える。
3.GB18030フォント †
WPS Officeに添付されるGB18030対応フォントは、
方正宋一(FZSY_GB18030_1216.TTF 17.5MB) 方正黑体(FZHT_GB18030.TTF 12.9MB)
の二種類である。名前からわかるように、製造元は北大方正。Post Script Nameは設定されていないが、幸いにして両者ともShiftJISで表記できるフォント名であるので、日本語モードのWindows2000でも認識可能である。
これらのフォントをATOK14のUnicode表で見ると、Unicodeの「CJK互換文字領域」(実際はエクステンションA領域。もろしげき氏の指摘による)、3400~4DB5に漢字が約6500字追加されているのがわかる。
そして、デフォルト言語が日本語のWindows2000環境で、Word2000、一太郎11、Aprotool TM Editor3.10、秀丸エディタ3.08、Becky!2.00.05などのUnicode対応アプリケーションを用いれば、これらのフォントはUnicode対応フォントとして、ほぼ問題なく利用できる。ただし、GB18030フォントとしての利用は、現時点では不可能である。
ひとまず、従来の日本語環境でも約27000字の漢字が使用できることが確認された。筆者は、各種コード表からの張り込みがうまくいかない、中国語モードの日本語版Windows2000+WPSよりも、日本語モードのWindows2000+Unicode対応アプリの方が、エクステンションA漢字の利用に関しては便利であるとの印象を持った。
3.1 各種文字コード表の対応 †
Windows2000で使用できる各種文字コード表で、エクステンションA領域が表示できるかどうか試してみた。
まず、Windows2000付属の文字コード表であるが、エクステンションA領域の漢字は、表示されない。文字コード番号を指定しても、CJK統合漢字「一」にジャンプしてしまう。「Unicodeカテゴリによる入力」を選択しても、選択肢にエクステンションAは見えない。
次に、IME 2000のIME パッドである。文字一覧・Unicodeを選択した場合、エクステンションA(こちらも、「CJK互換文字」と表示される)部分を表示・入力できる。
Wordの「記号と特殊文字」では、エクステンションAの文字を表示できない。試みに、WordにエクステンションAの文字を入力し、選択して右クリック[記号と特殊文字]を選択したところ、下図のように、コード表の冒頭にジャンプしてしまい、そこに選択した文字が表示された。
3.2 IMEの対応 †
結論のみ書こう。
- エクステンションAの辞書登録ができたIME:IME2000、ATOK14
- エクステンションAの辞書登録に失敗したIME:微軟拼音2.0
日本語IMEの方が、柔軟性が高いようである。