2004-05-27

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長安大戯院夜戯
江姐
  • 中国京劇院張火丁戯劇工作室+三団
  • 張火丁

さて、張火丁です。私は彼女を見て、初めて程派の良さがわかりました。 李世済や張曼玲は昔の留学時代に何度か見ましたが、程派の劇を見る機会 は全然なかったんですよねえ。声もそろそろ衰えていたし。そこで、97年ころで したっけ、中国京劇院に引っこ抜かれた彼女を見て、その声量の幅と 声質の深さに感動した次第。

さて、江姐は程派現代京劇なんだそうです。同名歌劇からの改編で、あのへんが 専門の太太によると、小説『紅岩』が原作だとのこと。開放前夕、重慶周辺の紅 軍ゲリラ部隊に赴任した江姐が国民党にとらわれて、拷問にもめげず、開国大典 を前に殺される、っていうようなスジです。ですので、衣装は全てリアルなもの です。

近頃は、新作劇や現代劇がホント多いのですが、しかし、その中でもこの劇は出 来がいいほうだと感じました。というのは、程派の劇、と称しているように、唱 を聴かせることを主眼に劇が構成されているからです。この点、ストーリーや政 治的主張に偏ったものよりも、はるかに伝統劇として鑑賞できる構造になってい ます。『紅灯記』に似通った印象をうけるシーンも多かったですねえ。

火丁の衣装は旗袍、全体に動作は少なめで、立って唱うシーンが大半でした。喉は相変 わらず良いですねえ。やはり程派の低音の響きには、悲劇的女性が似合います。

ほかでは、王晶華が出ていましたが、こういう様板戯っぽい劇に彼女を出すのは、 ほとんど反則技でしょう。まあ、だからこそ紅灯記的な香りがするのかもしれま せんが。ただ、喉は、流石に90年代初頭あたりと比べて相当に衰えましたねえ。

役者の芸は楽しめたのですが、全体としては不満もかなりあります。まず音楽。 プログラムにMIDI作曲とかいうのが載ってるのを見てイヤな予感はしたのですが、 序曲・間奏曲的に流れるのが軒並みシンセサイザーのチープでチャチな音。興ざ めも甚だしい。アレなら、オケの録音を流した方が一万倍マシです。

それと、全体の構成ですねえ。前半、江姐が川北への赴任するまで、人物紹介を して裏切り者の伏線を張る必要は分かりますが、場面転換が多くてドタバタした 印象を受けました。むしろ、この部分はばっさり削るか整理するかして、江 姐が夫の死を知り山に登ってゲリラ部隊と合流するシーンあたりから始めて、 もっと切々と歌い上げた方がいいんじゃないかなあ。

あとは、舞台セットね。色々と凝ったセットを、暗転してどたどたと入れ替えて ましたが、前のシーンの土瓶と鏡が国民党特務の取調室に落ちてたりしてました 。ここまでやるなら、歌舞伎や8時だよ!全員集合でも見習って、回り舞台その他、 場面転換の手法をもっと徹底して練り上げる必要がありますね。

客席はほぼ満席。花束プレゼントの若者が数名。拍手や好もなかなかよく飛んでまし た。茶席は、見学に招待された各地の演劇関係者で埋まってました。

雑記

2004-05-27/b

中国の試験不正問題

北京晩報(2004/05/27)に、中国の各種全国試験における不正問題の記事が載ってました。 教育部の通知の転載で、ニュースソースはこちら

数年前、高考の試験会場で受験生が歩き回ってカンニングしまくってるのを試験官が見ぬふりしてる 隠し撮り映像が流されて大問題になりましたが、問題は解決されないどころか、更に広まっているみたいですねえ。記事に書かれている事例では、教育業績を上げるためと金儲け、特に後者の目的が強いようです。拝金の風潮と、教員給与がさほど高くないお国柄の影響ですかね。

学生の受験する各種資格試験なども、大学によって差はあるのでしょうけれど、不正がなされている可能性が日本などよりも遥かに高いことになります。TOEFLとかは大丈夫なんですかね?

それにしても、近頃、北大近辺を歩いていて声をかけてくるのは、謎版屋よりも謎領収書・謎身分証明書・謎卒業証明書屋の方が多いくらいなのですが、中国の資格や証明書がココまで信頼性が無いとなると、流石に今後さまざまな不利益が表面化する危険性がありますね。実際、私が中国人を採用したり審査したりする立場であったら、自分で試験を課してやらないと信用できません。

まあ、ここでも、目先の儲けばかりを追求して、長期的な利益を考えない、中国人の悪い面が出てしまっているのでしょう。

そいえば、日本への留学希望者向けの統一試験とかあったと思うけど、アレの運用は大丈夫なんだろうねえ?うーん、人ごとではないニュースだなあ。