長安大戯院夜戯 †
四郎探母 †
- 中国京劇院二団
- 于魁智
- 楊四郎
- 李勝素
- 鉄鏡公主
- 管波
- 鉄鏡公主(盗令)
- 李海燕
- 蕭太后
- 江其虎
- 楊宗保
- 郭瑤瑤
- 佘太君
コンダクターの伎倆が運命で計られるのと同様、京劇役者の伎倆は『四郎探母』 でよくわかりますねえ。
この公演のメンバーの中で、もっとも輝いていたのは江其虎でした。彼の喉は、 高音が良く通りながらも厚みがあり力もあり、私がこれまで聴いた小生の唱腔の 中でもベストといってよい素晴らしさでした。巡営は本当に拍手が絶えませんで した。
于魁智は、まあ手慣れた様子で演じていましたね。嘎調も決まってました。ただ、 被擒のトンボは、前ほどきれいではなくなってました。そういえば、エラのあた りとか前より若干肉付きが良くなったような?もっとも、もとがガリガリでした からねえ。
そういえば彼、見 娘のシーンで佘太君を見た途端に跪く演出を90年代後半に試みていましたが、今回 は普通に、あれだ~れ?って六郎に尋ねていました。まあ、四郎は忘恩不義野郎 って扱いですから、この方がキャラクターには合っているわけですが。この点、 中国京劇院演出本では省略される見妻の一折は、やはり必要ですねえ。
李勝素、坐宮で楊四郎が本名を告げるところ、「駙馬、楊什麼?」ではなく「駙馬、別著急、 慢慢兒說吧」と言ってますねえ。こういう歌詞の流派があるのか、それとも彼女のオリジナルか。いずれにせよ、これは間合いが伸びるし、内容も落ち着き過ぎていて緊迫感に欠け良ろしくない。
李海燕、今まで排練しか見たことが無く、舞台で見るのは初めてでした。 ただ彼女、スタイルが良く細身なので、蕭太后には今ひとつ合いませんねえ。 冷たさを帯びた笑みが上手く表現できず、今ひとつ威厳が出ない。 以前の中国京劇院では馬小曼がいつも演じていましたが、あのくらい貫禄があっ た方がそれらしい。でも、太りなさい、とは言えませんからね、芸でなんとかカ バーできるよう頑張ってもらいたいですね。閑話休題、彼女は 声は出ていたし悪くはないのですが、やはり低音の厚さで火丁には一歩二歩譲り ますね。
管波と郭瑤瑤は今ひとつ。特に郭瑤瑤は扮相もよろしくないし、唱もパワフルさが 足りません。老旦は、どうも世代毎に力強さが減じて線が細くなっているような気 がしてなりません。
客はほぼ満席、喝彩もだいぶん飛んでいましたが、やはりタイミングにぴたりと 飛ばす人は少なかったでえすが。しかし、于魁智に李勝素をそろえても、張火丁専場 の喝彩には遥かに及ばないのですねえ。やはり、程派・火丁人気は相当に異常、 ってことでしょう。