2004-05-17

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長安大戯院夜戯
村官李天成
  • 河南省豫劇三団

現代豫劇です。あらすじは、河南濮陽県西李庄の党支部書記になった李天成が、貧困にあえぐ 村を豊かにするためにビニールハウスを普及させ、野菜価格が暴落すると周囲を 説得して村民に株を売って資金を集めて乾燥野菜工場を作り、工場に出資せずに 貧しいままの農民達の福利をはかるために党幹部たちを説得し、だれもが幸福 に暮らす豊かな村の建設を目指す……ってな感じ。

ここまで行くと、音楽が梆子である以外は、全く伝統劇ではありません。舞台も 人の動作も完全に話劇で、行当は、丑がアホの坂田みたいに笑わすのを除けば、 歌唱時の音域の相違以外はありません。臉譜も塗らないし、衣装はホント、農村 の人々らしいもの。豫劇三団は、現代劇を専門としているようですね。そういう ニーズが観客側にあるのか、それとも、政治的かつ現代的な芸術媒体として、省 政府に重宝されているのかは分かりませんけど。

これは、もはや伝統劇の見方を受け付けません。主にストーリーを鑑賞し、あわ せて演技や舞台セット、たまには唱腔に拍手する、ってなものですね。ただ、そ れでもなおも豫劇であり続ける必然性がどこにあるのかは、やはり疑問です。結 局は、上演者がうたいなれている音楽である、ってだけなのではないかなあ。また、 伝統劇のアイデンティティは、唱腔のみに存在するってことになりますねえ。

ストーリーは、模範農村共産党幹部を称揚する、「三つの代表」のための様板戯 を目指しているのでしょう。まあ、これは実話に基づいた劇ですから、貧困にあえぐ 農村などでは、それなりに説得力を持つのかも知れません。

ただねえ、共産党という政治と一体化した農村企業なんですよね。しかも村民への福 祉充実を相談する場面は、企業の社長室で、社長は党書記、党員連中は軒並み企 業幹部になっている、ということは、政治と企業経営、さらには地方行政財 政が明確に分かれていないということで、要するに開発独裁的な状況 なわけですが、ここまでずぶずぶな体制な企業で本当の発展への離陸ができるのか? と思ってしまいました。