2004-05-18

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長安大戯院夜戯
牡丹亭
  • 北方崑曲劇院

北崑も、本当に久々でした。

この牡丹亭、湯顕祖の原作を三時間弱に圧縮・再編集した、超特急劇です。もっとも、 南戯は長さの割にストーリー展開が少ないから、現代的にはちょうどいいくらいに なってしまいますねえ。改編と同時に、話劇的演出が大量導入されているのは、いわずもがな。

もっとも、このことは、套曲がもはや保持されず、音楽としての崑曲が解体されている ことを意味します。洪昇あたりが上演で曲がはしょられるのを嘆いていましたが、もはや それどころの話ではない。すると、歌劇としての崑劇のアイデンティティがどこにあるのか、 という問いが生まれてきます。観客は九割方埋まってましたが、唱への拍手はほとんどナシ、 拍手は判官がらみのトンボが一番盛り上がり、あとは幕が終わるごと、でした。つまり、客も 崑曲の音楽への理解はほとんど無く、崑曲を楽しむことは本質的にできなくなっています、私 自身も含めて。

かくて観賞後には、ムード音楽としての崑劇の断片 をちりばめて明清傳奇の国学っぽいイメージを売っているんだな、という寂しさが残りました。

台本構成は、最後に一般受けする判官の場を配し、その盛り上がりで最後の大団円 に突っ走るというもので、これはそれなりに効果をあげていました。細かい 演出では、花神のおねーさんたち、人数が多すぎる上に袖がまくれて腕が見えて下品。 群舞の振り付けも、高校のマーチングバンドを彷彿してしまいました。 蝶蝉燕雀がひらひらしながら卓椅を出し入れする演出は、失笑がもれまくってましたねえ。 まあ、明末には崑劇の舞台装置に凝るような文人も居たわけで、視覚的効果を工夫するのは 悪いことではないのですが、数百年の伝統で練り上げられた舞台の約束事を破壊したのに、 それに見合うだけの効果が上がっていないのであれば、それは本末転倒と言うことですな。

旦は、声量が今ひとつ。歩き方が どう見ても纏足っぽくないんだよねえ。生の方が声は出ていました。